初めて受けたアカシックリーディングの情報は今でも貴重な人生の道しるべ。
都内の指定されたビルの入り口でしばらく待ち、約束の時間ぴったりにインターホンを鳴らす。
「コンニチハ~。ドウゾ~。」
カタコトの日本語にやわらかな口調。ゲリー本人でしょうか?
ドキドキしながら部屋に入ると、フレンドリーなニコニコ顔のゲリーが握手で出迎えてくれました。通訳の日本人女性も笑顔です。
挨拶の際、ゲリーが初対面の私に「何か懐かしい感じがします。」と言ってくれたのに緊張で気の利いた返しができません。「そうですか。」とニッコリしてみたけれど、もっと嬉しそうにした方が良かったかしら?
いくつかの注意事項、「アカシックリーディングの未来の情報は、今現在のエネルギーの状態で最も起こる可能性の高い未来となるため、エネルギー状態に変化が起きると未来の情報が変わる可能性があります。」などの説明を受けた後、質問をどうぞと促されました。
「私の両親は長年の不仲の末に離婚しました。離婚は大きなトラブルになりましたし、母の兄弟はほとんど全員離婚しています。なにか因縁やカルマが家系にあるのでしょうか?」
思い出したくない過去が脳裏にチラつき、意を決しての問いかけに
「その質問には答えません。」ゲリーがキッパリと言い放ちました。
「(どうして?それじゃあ私、何のためにここに来たの?)」
胸がグッとなって言葉が出ません。
頭の中は真っ白け。
まったくの思考停止。
しばしの沈黙。
「あなた自身の質問のみに答えます。あなたの両親の出来事はあなたに関係ありません。」
「(関係ないってことないと思う。ずっと関わってきたし、不幸真っただ中の母を助けてあげたいのに…。何をしにここに来たっていうの?)」
再びの沈黙。。。
ショックを受けて身動き一つとれない私を見かねたのか、ゲリーが少しづつ話し始めました。
「あなたの今世での家族における課題は『許し』です。お父さんに対してはだいぶいい感じ。お母さんに対してはあともう少し。」
それは何となく腑に落ちる話でした。トラブルを招いたのは父ですが、父のどうしようもない弱さや心の傷を理解していたので、たとえ縁を切られても父を攻める気持ちはひとつもありませんでした。むしろ母に対しては確かに被害者でかわいそうとはいえ、いくつかの行動に疑問を抱いていたのです。母は自分を正当化しすぎていて自身の間違いには一つも気づいていませんでしたから。
「あなたの今回の転生の目的は、一人目のお子さんの魂を今世に招くことでした。最初のお子さんが産まれたときに何か心境の変化があったはずですよ。」
心境の変化?何かあったかしら?
そういえば若い頃、何をかも分からないまま「まだやり残してることがある。」と思うことがしばしばありました。それが長女を産んだ後は「もう、いつ死んでも問題ない。」という気持ちに変化していたのです。それから、産まれたばかりの長女を抱きながら「この子の結婚は難しいものになる…。」と理由もなくつぶやいたことを思い出しました。
ゲリーは子供たちの魂の本質についても教えてくれました。
長女とその弟は5才差なのですが、それほど年齢が離れているようには見えない。弟の方が年上かのようにしっかりしていて、お姉ちゃんには本当に困ったものだとウーンとゲリーはうなりました。当時の長女は優秀で聞き分けの良い小学生、弟は親を悩ませるほどやんちゃで自由な幼稚園生。
とても弟のほうがしっかりしているとは思えませんでしたが、年月を重ねるにつれて子供たちはゲリーの教えてくれた通りに成長していったのです。
「あなたは『望んだものは手に入らない』と思っていますね。」
ゲリーの突然の言葉に思わず涙がこみ上げてきます。あぁ、確かにそう思ってる。いつもそうやってすぐに諦める。でも、どうしてこんなに泣けてくるんだろう。それは繰り返す転生の中での経験から私にすっかりこびりついた”思い込み”だったからでした。
ゲリーはこんなことも言い当てました。
「あなた達は本当の夫婦ではありませんね?」
「はい、そうです。」
平然と答えた私に、今言ったことの意味が分かっているのかしら?とゲリーはいぶかって、もう一度同じ言葉を口にしました。
もちろん意味は分かっています。それは誰にも話したことのない情けない秘密でした。普通であればその秘密を指摘されたなら、恥じたりあわてて隠そうとしたりするのでしょうか?そんな自分がどう見られているか?ということよりもほんとうにリーディング出来ていることが確実に証明され、信じて大丈夫という安堵感を得てゲリーに素直な返事を返していたのでした。
意味が伝わっていることを理解したゲリーが話を続けます。
「あなたは更年期でもう子供はできませんから安心していいですよ。」
これにも私は素直に答えました。
「そうですか!良かったー!産むのは大変でこれ以上はムリ!殺されちゃうって思ってたんですよ!良かったー!」
子供ができる理由はもう一つも無いけれど、それでも身体にキツい思いをしなくていいと太鼓判を押されたのが無性に嬉しかったのです。
すると、なぜかゲリーが腹を抱えて笑い出しました。ソファーから転げ落ちそうな勢いでおかしくてたまらないといった風に長らく笑っていて、通訳の方も困り顔です。
私の頭の中は?マークでいっぱい。何が面白いのかさっぱり分かりません。そんなに変なこと言ったかしら?それとも喜び過ぎ?もしくは私、何か勘違いしてる??
ねぇ、ゲリー。一体、何が視えてるの??
この十数年前に受けたアカシックリーディングでの情報は、今でも貴重な人生の道しるべとなっています。
両親の不幸から離れて自分の人生を生きることを学び、家族のみならずできる限りあらゆる人に対しての『許し』に挑戦し続けることで幸せが近づいてくることを知りました。
長女の魂の本質は反抗期になって表面にあらわれ始めたのですが、心の準備ができていたのでその豹変ぶりにあわてず対処することができました。
その一方で、情報の意味がまだはっきりしていないものもあります。なぜ子供を授かる事はないとわざわざ言われたのか?それを喜んだ私をなぜゲリーはあれほどまでに笑ったのか?
今になればゲリーが視た未来を二つの可能性に絞ることができます。そのどちらが正確な情報の解釈だったのかは、未来が現実になった時に確信をもって「このことだった!」と分かるはずです。
もしくはセッションの最中に「どんな未来が視えたのですか?」「今の情報はどういう意味ですか?」とゲリーに問えば詳しく教えてくれたかもしれません。ですが、事の詳細を尋ねなくて良かったと私は思っています。
この転生を通してワクワクする未知の冒険をするために、今ここに居るのですから。